黒猫の三角
・森博嗣のVシリーズ(とか呼ばれているらしい)「黒猫の三角」読了。何がVなのか、さっぱり。
犀川と西之園のシリーズに「笑わない数学者」ってのがあるんだけど、この話のキーになる「神の最大のトリック」という言葉を、否応無く見せ付けられる話だった。プロローグこそエンディングである、そしてエンディングこそプロローグに過ぎない…。ありがちだけど、この構造は本題の最大の謎と噛み合ったツーサイドトラップを構築しており、これ以上見事な実践はないだろうという形で見せられてしまったため、なんかぐうの音も飲み込んでしまった。
あ、ちなみに犯人当てという意味でのミステリの楽しみは、三分の二を「昇華」した時点で終わりました。具体的に言えば不思議が終わって、退屈の章のあの時ですね。
さて、…
シリーズを重ねるごとに森博嗣の頭は冴えを重ね、切れ味を増して読者を「殺そう」としてきますので、ある程度、そうですね「F」の覚悟がないとあぶないかもしれない。流行だからって読むようなものじゃない。武装ではないですが、自分を確固としていないと洗脳される危険性も有ります? いや、ねえなそれは。
ともかく…、彼のソリッドな文体は数学者の書く空想多角を思わせます。コンピュータはそれを擬似的に画面上に描き出し、そこに私は幻想を重ね、ポリゴンをファンタジックに、あるいは現実的に色付けして楽しんでいる。文章に沿って空想を描くというのは、読書においてどの文学も似たようなものではありますが、森博嗣ほど、肉の無い骨格が見える文章というのは、いまだかつて出会っていません。本質はそこにある、いや本質のみがそこにある。みたいな。まあ、私の体験などどうでも良い話で…。
みなさん、読むために買いましょうか。