« 作成日記 | メイン | 言葉にできない。 »

薔薇3

・何も考えずに書くって素晴らしい。
 あと二時間も書けば完成するでしょう。起承転結も何も無いのんべんだらりって感じです。

 完成したらまた、追記(薔薇の本文)のほうも補完しておきます。
 時間が無いから、今はまだここまで。

 ああ、白詰草話の「escape」って素晴らしいね。
 何でも書ける気がする。無計画に。


 彼女と知り合ってからというもの、ずいぶんと世話になっている。
 私の行っている研究とは、「実験」と「結果の観察」の繰り返しが主体になるものだが、実際は紙切れの上で試行錯誤する時間が大半を占めている。
 具体的な流れはこうだ。まずは研究の対象を、今までの研究成果、現存する他人の資料などを基にして絞り込む。この前提で失敗すると、のちのちの時間と研究費を大幅に無駄にすることになるから、何十にもチェックを重ね、慎重に行う。テーマが決まったら、薬効の計算という手間がかる手順を踏んで、工程を組み立てる作業に入る。これはもう自己流である、自分のやりやすい日程を確保して、材料をそろえる。試験管や薬包紙などの消耗品の在庫チェックもこのときに行う。最後に入念にチェックを入れたのち、ようやく実験に入るというわけだ。
 ここで最近知った知識を記録しておくが、私の言う実験は、正確には実験ではないらしい。その言葉が「結果までの道のり」を指すのに対し、私の実験は、要するに火や薬品で反応を促す「本番」のことだ。だから実験そのものに掛ける時間は短い。実験を行うときに同時にこなせるような仕事を入れるため、時には不要に長引くこともあるが、これは例外であろう。
 さて、実験そのものの成果が得られずとも、また結果が成功であろうと失敗であろうと関係ない。本番後には「まとめ」となる作業が待っている。大抵は一度の実験でテーマを達成することは無いので、次回のための資料作りといったところだろうか。使用した機材の損傷具合の記録や金額の集計もこのときに行う。レポートを書くのもこのときだ。
 とまあ、このような具合で、研究中の時間は机に向かっていることが多い。資料作りがほとんどである、と言い切っても差し障りない。
 しかし残念なことに、私自身の持つ家は、こうした一連の研究には一切向かない造りになっているのだ。
 というか、まず部屋が無い。
 私の寝室は機材と私服で埋まっているし、まさかキッチンや風呂場で書き物などするわけもない。空き部屋のほとんどはガラクタで埋まっている。満室状態である。手広い空間という意味で若干余裕のある地下室は、現在二つほどあるが、そんなあなぐらで一体何ができようか。せいぜいがよほどの火力を要する大規模な精錬、製造くらいのものである。
 私自身の問題もある。
 私は趣味で、珍しいものや真新しい魔法道具などを集めている。だが、書籍を集める高等な嗜好は持ち合わせていない。つまり、参照するべき他人の資料をあまり持っていないのだ。現在所持している本は、自分の書いた研究日誌とレポート、レシピ、あとは絵本が数冊くらいである。まったくもって研究に向かない家だ。まったくまったく。
 しかし、世の中というのは良くできているもので、私の性癖とは正反対に「書籍を片っ端から集めまくっている」人物が居る。重版に重版をかさねた一般書から、世界中、誰もが喉から手を出して欲しがるような涎ものの稀覯書まで、なんでもござれであるという一種のマニアだ。
 似たようなものに稀覯書をとにかく収集しまくる単なる蒐集家なんてのもいるが、彼女自身は彼らのような存在を心底嫌っているくらいの読書家でもある。読むために集めているのである。
 彼女の名は、パチュリー・ノーレッジ。館が図書館そのものである、いや、むしろ彼女が図書館に住み着いているというべきか、とにかくかなりのカワリモノである。
 そんなわけで私の「研究」中のおよそ半分の時間は、図書館での作業になる。その膨大な資料を頼って昼夜を問わずお邪魔させていただいているというわけだ。どんな時にも彼女は、まあ態度こそそっけないが、邪険にせず門戸を開いてくれる。困った時のパチュリー様なのだ。
 一体いつ寝ているのか、いやいつだって寝ているのだろうか。
 そんな彼女の話はおいおい書くとして、今日は、情操教育としてチルノを図書館へ連れて行くことにした。あの台風娘もそろそろ本の素晴らしさに触れておくべきだろうと考えたのだ。
 じっとするのが何より苦手な娘だから、絶対嫌がるだろう。
 そう推測しつつも、朝食の席でさらっと話をしてみると。
 口をへの字に曲げて、間延びした声で厭さを前面に押し出す返事で「うええええーっ」。
 やはり予想通りの反応を見せた。
 だがそこで諦める私ではない。チルノ相手にはとっておきの切り札があるのだ。
 「今日は特別に箒にのせて連れてってやるぞ」
 この一言である。
 これを聞いたときのチルノの顔は、とても文章などで書き表せるものではない。デッサンが崩れる。
 そんなに箒が好きなのだろうか。思わず呆れるほどである。


 黒い屋根の図書館は、湖上に浮かんでいる。巨大な紅魔館の隣にあるから小ぢんまりとした印象を受けるが、軽く見積もっても、二階建ての霧雨亭よりも二周りは大きい建物である。さらに中に入ればわかることだが、主人の趣向で内部空域をゆがめてあり、図書館の中は質量保存を完全に無視してとんでもなく広大な空間を保有している。加えて、深度可変式の地下も有りである。それでようやく住居を確保できるほどというのだから、いったいどれだけの本を抱え込んでいるのか、想像するだけで寒気がする。いわば、英知のブラックホールである。
 私の趣味とはおそらく規模と規格が違う。
 黒煉瓦の屋根を空から眺め見るたび、パチュリーの書物に対する情熱と掻き集めた知識の量を想像しては、そのことを思い知らされるのだった。
「す、ごいねえ…」
 背にしがみついているチルノも、開いた口が塞がらないといった様子で身を乗り出している。出かける直前に彼女の趣味を簡単に聞かせてはいたが、実際に目にすると何か感ずるものがあるのだろう。
「これ全部、本でできてるの?」
「本で出来てるわけじゃないが…、まあ似たようなもんだ」
 へえ、と何度もあくびのような感嘆をあげる。そんな会話を繰り返しながら、ゆったりと図書館へ近づける。
 地面にはっきりと影が写るほどになると、紅魔館の門の前で誰かが立ち上がった。
 花壇の手入れをしていたのだろう、こちらに気付いて美鈴が片手を挙げる。直接図書館へ向かっていた足を止めて、彼女のそばに降り立った。
「今日もパチュリーさんのところですか?」
 華やかな声で挨拶する美鈴に、手を上げて笑顔を返す。
 彼女は私の後ろを見て、あら、と驚きの声を挙げた。
「チルノも一緒なんて、珍しいですね」
「ああ、お荷物だが、ついでに連れてきた」
「お荷物ってシツレイな!」
 叫んで瞬間で顔を紅潮させる。その勢いで箒を飛び降りるチルノに、和むように美鈴は笑う。
「もうすぐ、お茶の時間なんですよ。そろそろ焼きあがる頃だと思いますから、お二人も召し上がっていってください。そう、今日は自信作なんです!」
「いいねえ。やっぱりお茶は淹れてもらうもんだ」
「ですよねえ…。お茶は大勢で、にぎやかなほうがいいです」
 美鈴の嬉しそうな仕草ににやりとしながら、自信作とやらに想いを馳せる。
 さっそくうろちょろと歩き回っているチルノを捕まえると、手伝いに戻った美鈴と別れて、図書館に歩き始める。
 細い手首を掴んだ逆の手で帽子を被り直しつつ、ちらりと隣をうかがう。
「楽しいか?」
「うん、おでかけ好きだもん」
「そうか」
 実を言えば、チルノをここに連れてくるのは負けの強い博打だったのだが、それはどうやら杞憂に終わったようだ。
 この様子では本当に何も覚えていないのだろう。私としては、不安が外れてなによりである。
「ね! あれなに?」
「んー…、温室じゃないかな。ガラスにこまかい削り細工があるから、きっとパチュリーが作ったんだぜ。まったく、このあいだ展開図書いてたと思ったのに、仕事が速いというかせっかちというか…」
「入れるの? 入っていい?」
「あとで訊いてみような」
 ぞんぶんに日差しを浴びてなお、つかんだチルノの腕はひんやりとしている。
 そういや、咲夜がメロウハイフィンの苗を探してたな…。見つかったのかな…。今日の用件に関して思案を巡らせながらそのことを思い出し、なんとも考えのまとまらないうちに図書館に辿り着いてしまった。
 なるようになる、か…。
 扉をぐっと引き開ける。

「よお、来たぜパチュリー」
 静かな図書館に、響くように声が渡る。
 広い館内を一望して姿を探すと、壁のように立ちはだかる本棚の一部に見慣れた姿があった。伸びた梯子の真ん中で、体ごとパチュリーが振り返る。今まで主人を囲んで楽しそうにしていた二人の小悪魔は、私の姿を認めるや否や、本を投げ出してあわてて奥へ引っ込んでしまった。
「おいおい、嫌われてるなあ」
「あなたは特にね。…いらっしゃい、魔理沙、チルノ」
 余計な一言に肩を竦める。正面に見える作業机に向かって、口を開きながら歩みを進める。
「あんな風に逃げられなきゃいけないなんて、私が何かしたか?」
「人見知りするんだもの、仕方が無いじゃない。今に始まったことでもなし。いい加減に慣れてちょうだい」
「いわれも無く拒絶されるとな、人は傷つくんだよ」
「あら、あなたも人の子だったのね」
「…あのなーパチュリー」
 パチュリーは本を机に置いて、にこりともせずのたまう。鉄面皮を崩さず、悪びれない態度はいつものことである。
 彼女と討論を交えるのは茶飯事なのだが、こと日常会話では、どうも勝てる気がしない。もっとも、この程度の些細な会話に、勝負の意識がパチュリーにあるのかは疑問だが。
 呆れ顔の私を放って、時折しか見せない微笑を隣に向ける。
「元気そうね。お久しぶり、チルノ」
「おひさしぶり?」
 眉を跳ね上げ、羽を動かし、チルノはひょうきんに意外そうな反応を見せる。それにもパチュリーは笑みを重ねた。
「ええ、ずいぶんと久しぶり。私の顔、忘れちゃったかしら」
「えーと、うんと…」
 言葉に詰まって、助けを求めるように私にちらちらと視線を送るチルノ。
 やはり、である。
 私は横から、首を折れそうなほど傾けているチルノの髪をかき混ぜる。
「まあまあ、忘れちまってもしょうがないさ。なんせ寝ぼけてるし。それ以外に顔に特徴がないからな」
「…ちょっと、どういう意味かしら」
「それよりも、さっきの二人と遊んできたらどうだ? きっと奥のほうに隠れてるぜ。かくれんぼは得意なんだろ」
 殺気をはらんだ声を軽く聞き流し、そっと背中を押してやる。
「えと、…行ってもいい?」
 戸惑いながら私とパチュリーを交互に見、どちらかというとパチュリーに問うようにぎこちなく声を出す。
 パチュリーは強張らせていた表情を和らげると、ええもちろん、と頷いた。
「遊んでくれると、きっと二人も喜ぶわ」
「それじゃあ…」
 どこか居心地悪そうに眉を潜め、軽くお辞儀する。
 最後に一度だけパチュリーの顔を覗き見ると、そのまま小走りで彼女の脇を通り抜けた。
 間もなく、つと、と地面を蹴り、氷の羽を広げて飛び上がる。本棚群を越え、遠ざかるチルノを目で追っていた密室の魔女は、自らの中で何か納得したらしい。そんな表情で、文字通りこちらに向き直った。
「やっぱり何も覚えてないのね」
「分かってるなら、意地悪しないでやってくれないか」
 小さくため息を吐きながら愚痴を言う。魔女は、すでに普段の不眠気味のまなざしを戻している。
「確認しただけじゃない。心配しなくても、傷つけるつもりなんて無いわ」
 もちろん彼女の意図など知っている。だが、あまりに不憫だ。
「私たちの心配なんて、あいつは全然気にもしてないだろうが」
「そうかしら」
 私が無意識に漏らしたため息に反応する。
 確かに、今のような小さな不安を重ねていけば、いくらチルノだろうともいつかは何かを気取るだろう。
「だから言ってるんだよ。あんまりいじめてくれるな」
「そう、…ごめんなさいね」
 急にしおらしいところを見せて、パチュリーは自分の椅子を手繰り寄せた。
 その椅子は以前まであった、見慣れたものではない。真新しい椅子である。ある事情により、最近になって新調したものだ。
 その事情は最近のこと、では、もうない。
 昔というほど過去でもない。
 かつてこの紅魔館で、単純ながら多少面倒なごたごたがあった。一夜限りで一応は決着を迎えたそれに、私やパチュリーは巻き込まれていた。この大きな図書館は、巻き込まれるどころか、騒動の舞台として選ばれてしまい、そのときに一度、半壊している。たった一夜で屋敷ひとつが潰れてしまったわけだ。以前パチュリーが愛用していた椅子も作業机も、その時にまとめてミンチになってしまったのだった。
 ある事情というやつがどれだけ物騒で面倒で、はた迷惑だったか。思い出すだけで笑える、いや笑うしか道は無いというか。そんなわけでその件は、それだけなら私にとっては愉快な話の種のひとつでしかない。だが、少々残念ながら、笑い話にできない理由があった。
 屋敷半壊という、そんな無節操極まりない面倒事に、何故かチルノもまた、深入りしていたようなのである。
 そしてそのときに、彼女は、それまでを失った。
 チルノとしての生を一度は終えた。そう私は認識している。
 本来なら気がかりながらも放っておくようなことだが、私情で、一個人的な思惑から、今は霧雨亭で引き取っているというところだ。
 以上説明終わり。
 私は静かに深い呼吸をして、勝手知ったるという態度で空いた椅子に手を伸ばす。パチュリーの目の前、自分の居場所を陣取って頬杖をつく。
「正直、ここに連れてくるのはためらったんだがな。仮に記憶が残っていたとして、思い出す必要なんてぜんぜん無いんだ、忘れたままで居ていい」
 パチュリーの瞳を射抜くつもりで睨む。
「だけど、それだと私が困る。確実だといえる根拠が欲しかった。…まあ、チルノにゃ、いい迷惑だろうけど、さ。それに、例が全然無いわけじゃないだろ。実際、紅魔館を見たって怖がる用でもなかったし。おそらくパチュリーもそう踏んでたように、さっき美鈴に会ったときにも、同じく無反応だった」
「イングの妖精概文録どおり、と見ていいのかしら」
「ああ、多分」
 机に積まれた幾多の蔵書の一箇所に視線を集める。
 上から下から紙の束に挟まれたこげ茶の背表紙は、概文録、と書かれていた。
 …古文学者イング・マコーの著である。彼は委員会に正式に登録もされている古文の学士であるが、なぜか死後に、妖精に関する本を一冊だけ発表している。そこには、属種により違いはあるだろうが、それを除いても十分すぎるほど有用な、生態、身体特徴など妖精に関する情報が事細かに記録されていた。その頃は妖精という事象がまともに観測された例も数えるばかりで、学会では、ついに妖精など居るのかという根本的な部分から意見が割れ、争われはじめていた時代である。そんなもんだから当時、これを見つけ出した魔界都市の「妖精はいるよ」派の学部は、鬼の首を取ったように、ひどくセンセーショナルに取り上げていた。
 概文録と銘打たれた推論文集は、彼がまとめた観察記録でもある。イングは誠実で聡明な人物だったが、現在では、やわらかく表現すれば「少々世間から外れた頭の持ち主」として有名で、なんと「自らを妖精と名乗る孤児を引き取った」らしいことを、この著の中で明らかにしている。発表されたのは彼の没後で、そこに書かれている人物の真偽も当然ながら疑問視された。だがこの騒動で新たに開設された専門の学部によって疑問の声はもみ消された、らしい。魔界の学者は力技が好きなのだ。
 パチュリーがそらで暗唱する。
「イングによると、妖精は深く眠ることによって一切の記憶を失う。その眠りはおそらく自らの生命が脅かされた時にその存在の本能から引き起こされる無意識のものである、らしいけど」
 覚えているのか、はたまた重ねられた本の中から、魔力で読み取ったのか。
 欲していた言葉に、私はにやりと笑って応えた。
「チルノの場合、ばっちりじゃないか。イングは正しかった。ってことが証明されたな」
「でも、それじゃあどうして一切の記憶を失った妖精は、自分のことを妖精だって言ったの? イングは概論の中で証明もしてないわ。正しいなんてまだ分からないじゃない」
「さあな。羽でも生えてたんじゃないか?」
 てきとうな返答に、パチュリーは眉をしかめた。
「だって私はイング派じゃないし、概文録の内容が正しいかどうかなんて興味ないもん」
「…そりゃあ、そうでしょうけど」
 さらに口を尖らせ、私がずっと見ていた茶色の装丁を引っ張り出してみせる。
 彼女の言いたいこともわかる。書物を根拠にするなら、その本の内容の真偽ははっきりさせておかなければならないことだ。おまけに知識欲の塊で、読書が生き甲斐のパチュリーにとってはよほど大切なことだろうが。
「私が知りたいのは、チルノが昔のことを思い出すのか。それとも、もうずっと…あのままなのか。それだけだ」
 私が口を閉ざしたので、仕方無しに魔女は魔女らしく手にした概文録を熟読し始める。
 彼女の読書の速度は並か、人より少し遅いくらいである。一文、一文字を眼を通して全身に刻むように読み進めていく。寝ぼけたまなこがゆっくりと横に動き、左端に行き着くと、外見どおり、おっとりした仕草でページをめくる。見ているとまるでパチュリーの周囲だけ、時間の流れが遅くなったかのように感じる。
 ひとしきり観察しながら、ぼんやりとチルノのことを考えていた。
 外はいい天気で、静かな図書館では外の鳥の声でも聞こえてきそうなほどのすがすがしさである。
 鳥に代わって子供の声が聞こえてくる。聞いたことも無いような明るい二人と聞きなれた一人。仲良くやっているようだ。
 一緒になって遊んでもいいかと思ったが、そういえば小悪魔たちには嫌われているのだ。
 なんとなく間をもてあまし、そう、と思い出して再びパチュリーを見た。
「なあ、パチェ。お願いがあるんだけど」
「いや」
 即行で断られ、私は苦笑を漏らした。
「そういわずにさ、聞いてくれよ」
「だって、あなたの頼みって、面倒なことばっかりなんだもの」
 じりじりと後退し始めそうなほどの嫌気を前面に押し出す彼女を、まあまあ、となだめつつ腰の巾着袋に手を回す。そこから小さな包みを取り出すと、一向に本から目を離さないパチュリーの前に、無理やり置いた。
 がちゃり、とガラクタの音。
「チルノがさー、割っちゃったんだよ。ねえ、なんとか直せないかなー」
 拝み手に、私なりに精一杯の猫なで声を重ねる。するとそれがあまりに気持ち悪かったか、ゆっくりと顔を上げて、寝ぼけた目をさらに細めて、包みと私を交互に見返す。
 そして、ふうと可愛くため息をついた。
 こうなったらほぼ確実である。ひとしれず心中で拳を握る。
「なんなの、これ。カップか何か?」
「そうそう、あとちっちゃいポットとちっちゃいソーサのティーセット、だったもの。気に入ってたんだよ」
 片手で包みを覗き込むと、パチュリーは、ああ、と短く反応して「二日くらいかかるかも」と厳しい返答。厳しいといっても、特別、急いでいるわけではない。そういう意味ではない。彼女の実力をもってしても二日は必要、という破損の具合のことだ。
「完璧に直してくれなくてもかまわない。形だけあればいいんだ」
「あら、道具は使ってこそでしょ」
「うん、そう。そうなんだけど、使えない理由があるのだった」
 おちゃらけた風に言いつつ、ぱたん、と自分の右手を机の上に伏せるように置く。意味がある動作ではない。
 密室の魔女に戻ったパチュリーは、もう私を見もしない。ふうん、そう。と渇いた返答ののちに、包みを書きかけのメモの上に退けた。そして読書を再開する。すでにしている。
 なんにしてもつれない反応である。
「なあ、あくまで相談なんだが…」
「なによ」
「霊夢に会わせてもいいと思うか?」
 不意に切り出した言葉にパチュリーは上目遣いで睨む。
 込められた怒りからだろう、切れ味を増したその視線に、つい私から逸らしてしまった。
「それは、…あなたが決めるべきじゃない。そのために連れてきたんでしょう」
「そうなんだが…」
「チルノを引き取ったのも、霊夢と離しておいたのも、全部、あなたのエゴよ。だったら私に責任を押し付けるのはやめてちょうだい」
 手厳しいお言葉に、なんともばつを悪くして腰を浮かせる。
 そう、これは勝手な感情で、エゴでしかない。
「責任を押し付ける、つもりは無いんだ。ただ、お前さんの考えを聞きたい」
「それが押し付けだっていうのよ」
 魔女はにべも無い。いつもの鉄面皮、抑揚の無い声で拒絶する。
「あなたが始めたことなんだから、最後は自分で決めなさい」
 叱責を背に受けながら、図書館の出口へ歩き出す。
 だってあのままにはしておけないだろう。
 記憶も居場所も失って丸裸で、その原因の真っ只中に放ってはおけないだろう。
 森に捨てればよかったのか、それをお前さんなら出来るって言うのか。
 何の下準備もなく霊夢と会わせたら、二人が傷つかないと思うのか。それが偶然なら仕方がないと思えるのか。私の立場だったら、お前さんも似たようなことするだろう、だのにどうして私を責められる…。
 言い訳を頭の中で並べ立てながら、それがことごとく「言い訳」であると気付いて、最後は泣き言を口にする。
「私は意志が弱いんだ。特に、背負いきれないくらいのリスクがあるときにはさ」
「知らなかったわ」
「怖いんだ」
「当然でしょう。そのくらいの覚悟が無ければ、彼女が可哀想だわ」
 彼女とは、はたしてどちらを指しているのか。
 考えてふと、どちらにしても当て嵌まることに気付いた。皮肉である。
「逃げてばかりね、あなたは」
 知ったようなことを。
 言葉を返す代わりに、そろそろだろう、と扉をゆっくりと押し開ける。
「あ、魔理沙さん。丁度よかった、手がふさがってたんです」
 思ったとおり、美鈴が立っていた。
 手には大きめのポットが三つとバスケットを抱えている。
「お茶の時間ですよー」
 屈託の無い笑顔が、外の陽気とそのまま重なっていた。
 この図書館にすばらしく足りないものだ。

 お茶と聞いて、遊んでいたはずの子供たちは、すっ飛んできた。
 私を毛嫌いしていたはずの二人も、まるで眼中にないといった様子でちゃっかり椅子を持ってきて座っている。
 机の向かい側に、小悪魔はパチュリーを挟んで指定席のごとくである。そう広くない机なので、チルノと私が並び、忙しく立ち回っている美鈴が間に入るという構図である。
 しかし、誰も美鈴の手伝いをしようとしないのが不思議である。図書館の人間は、彼女が準備する様を見ているだけ、いや見もしないでそれが当然であるかのように座って待っているだけである。まあ、客ではあるものの、自分たちも同様なので口にはしないが。せめて見守ることくらいは、と働く美鈴の姿を無意味に目で追ってみたりした。
 積み上げられた本の山が颯爽と姿を消し、机が片付けられカップが並べられ、着々とティータイムの様相へ近づいていく。
「紅茶とコーヒーとミルクココアがありますよ。お好きなのをおっしゃってください」
「私は紅茶ね」
 バスケットから湯気の立つおしぼりを取り出して、パチュリー。双子はココアの一択らしい。
 はいはい、と美鈴は各々のカップにそれぞれの飲み物を注いで回る。
 バスケットを一瞥すると、どうやらおやつはシナモンパイのようだ。そこらへんの本のようにぶ厚いパイの表面は、パリッとこんがりきつね色である。かすかな気分の良い匂いに、ココアの香りも鼻をくすぐりはじめて、これがまた食欲をそそる。咲夜謹製の一品だろう。
「それじゃ、私はコーヒーを頂きますかね。チルノはどうする?」
「うんとー、ココアって何?」
「キャヴァみたいなもんだ。甘くてあまい」
「そんじゃね、あたしもココアがいい」
「だそうです、お願いします美鈴さま」
 真似して頭を下げるチルノにくすりと笑って、美鈴は持っていたポットを傾ける。
 とろりとしたチョコレート色の液体が、独特のあまい香りを尾を引くようになびかせて小さなカップに満ちていく。今回出会ったはじめての飲み物に、期待と緊張が混ざり合った目で、チルノはじっとカップを見つめている。飛沫が顔に掛かるくらい近づいているのに、美鈴の注ぎ方はプロ顔負けだ。最後の雫すら飛ばなかった。
「コーヒーにはお砂糖とミルクがありますけれど」
「いや、そのままでいいよ。ありがと」
 最後に自分のカップに紅茶を注ぎ、彼女もようやく席に着く。
「今日のおやつは自信作です。えっへん」
「え、美鈴が作ったのか? てっきり咲夜かと思ったぜ」
「もちろん、二人で作ったんですよ。さすがに私ひとりじゃ…」
「ああ、なるほど」
 照れるように笑い、美鈴はバスケットからシナモンパイをおごそかに机に引き出す。
「うわあ、ケーキだ!」
 たしかにホールケーキと見紛わんばかりのしろものだった。自信作というだけあって、これまたパイ生地十段重ねかというほどの気合いのはいった力作である。パイと言うほうが無理がある、といった厚みのある風体は、視覚的に重々しさをもうったえてくる。
 香ばしい音と共にナイフが入ると、切れ目からは充分に漬け込まれて甘さたっぷり、山吹色のりんごが見えてきた。なるほど、と思わず感心も漏れる。
「この焼き加減はすばらしいねー、美鈴君。このパリパリ加減はじつに私好みだよ」
「魔理沙さんにお褒めいただくなんて、この美鈴、光栄の極みです」
「うむ。きみも存分に食べなさい」
「ほんとう、おいしそうに焼けてるわ。ね、みて」
 皿に取り分けられたパイに群がるように、パチュリーと小悪魔が小さくはしゃいでいる。先程までの、私に向けられていた冷静な魔女の性格は鳴りを潜めている。普段からこうである。
 彼女は、きっと頭の中にいくつもの部屋を持っていて、主題ごとに思考のパーティションを切り替えることが出来るのだろう。複数もの会話を同時に、的確に進めることが可能なのだ。この思考の素早い切り替えこそが、議論が主になる私とパチュリーの付き合い方そのものであるとも言える。
 実に楽しそうな団欒の風景に、こっちはどうだ、と目をやると、…チルノは次々に押し寄せる未体験にすでに思考がオーバフロウしているようで、姿勢も表情も前のめりのまま強張っていた。背中の羽だけがパキパキとうなり、その心情をあらわにしている。
「すごいだろ。ここのおやつはいつもこうなんだ」
「えー、うえー…」
 ただただ感嘆しか出てこない、という様子で目の前のパイを凝視している。
「いっつ、ぷろふぇっしょなる」
 どこで覚えたそんな言葉。
 腰といわず背骨あたりが砕ける音を錯覚し、手にしたフォークを無造作にパイに突き立てた。
 そのまま四分の一ほどざっくりと削り取って口に放る。途端に、まるで熱湯でも飲み込んだかのように口内に締め付ける痺れが走った。焼きたてのパイ生地の食感、さわやかなシナモンの香りとほのかな漬けりんごの甘みが口の中でひとつになってはじける、最高にすてきな味わいである。
「うん…うまい! ほら、チルノも食べてみろって」
「でも、たべちゃうの、なんかもったいないね」
「そうだなー、確かにもったいない。でも、少なくともおやつは食べるもんだ」
 お手本だとばかりにさらに大きな塊にかぶりついて、もったいぶらず租借する。こうして食感を楽しむのだ。
 横でほほう、と味わい方を理解したらしいチルノも、負けずとフォークを握り締める。
 「もったいない」を連呼していたチルノだが、決心してパイを一口含むや否や、フォークをくわえたままで絶叫を上げた。口を閉じているから悶絶だろうか。そのうえ、手を伸ばした初体験のココアにも無為に感動したようで、咽ぶように顔を覆って足をジタバタさせている。さわがしいやつである。
 その他、口々に感想を述べつつちまちまとパイをつつく一同をよそに、私はすでに一皿ぺろりとして一人でコーヒーを楽しみ始めていた。下品ではない深い苦味。美鈴が淹れたに違いないコーヒーも、酸味を抑えた極上の一杯である。
「魔理沙さん、コーヒーのおかわりはどうします?」
「うん、ああ、もらってもいいかな」
 頷きながらソーサーごとカップを渡す。美鈴は笑顔で受け取ると、周囲を見渡して同じようにカップを回収していった。
 彼女に紅茶を頼み、空いた皿にフォークを置いたパチュリーがこちらを向く。
「そういえば魔理沙」
「んあ?」
「今度、近いうちにカシュブルクまで買い物に行く予定なんだけど、あなたもいっしょにどう?」
「んー…、そうだなあ」
 生返事でコーヒーのおかわりを受け取りながら、カシュブルク、と聞いて想起する。
 いくつかある魔界の地方も地方、ロウギあたりに位置する小さな町だったと思う。辺鄙な場所で目立った産業もなく、交易も乏しい。特徴という特徴がない、直接にも間接的にも私とは無縁の町である。だがパチュリーはこの町にひどく傾倒している。
 彼女は、自身の持ち物に妙なこだわりを持っている節があり、どんなものでも「ここ!」と決めた店でしか購入しない。インクや白本、付箋紙などの身の回りの消耗品はカシュブルクの「もみのき屋」。家具なら同じく魔界のヘンペントゲン社製が良いらしい。はたから見れば大した違いは感じられないのだが、彼女は何故かそういった部分に固執するのだ。
「インクを買いに、わざわざカシュブルクまで出て行くのか」
 多少のあきれを含んでそう言うと、新しい紅茶から口を離して、もちろん、とパチュリー。
「ランプの芯も、そろそろ換えないといけないから」
「なるほどね…」
「それで、どうするの」
 行ってもいいか、と思いかけていた私だが、せっつかれて少し面倒くさくなった。どうして買い物程度のことで返事を急かされなきゃならないんだ、と思う。
 せっかくのお誘いだが、と答えかけ、ふとなんとなく思いついて隣を見た。
「チルノも、連れてってもいいか?」
 すると、二人は「えっ」と意図の異なる同じような声を出した。
「行ってもいいの!?」
 と、意外そうにチルノ。
「置いていくつもりだったの?」
 と、意外そうなパチュリー。対照的である。
「私はチルノも一緒に、って意味で訊いたんだけれど」
 少し不安そうな顔をしてチルノを覗き見るパチュリーに、いよいよ身を乗り出して興奮気味にまくしたてた。
「行くいく! いっしょに行く!」
「よかった」
 胸を撫で下ろして微笑する主人を囲み、ググル、リドルの二人も両手を振り上げて喜びを表現する。すっかり二人に気に入られているようだ。いっしょにおでかけ、などと踊り始める始末である。つまりこれはあれだ。分かってはいたが、私は要するに、ダシに使われたらしい。
 そう、そうなのだ。考えてみれば明快至極、普段から三人連れで出かけているパチュリーが、私が二人から嫌われているのを充分承知している上で誘ってくるというのがおかしな話なのだ。私を誘うということはすなわち小悪魔は置いていくという選択であるが、そりゃあ確かに二人だけで出ることもあるが、たかだか買い物に私だけを、という状況は不自然すぎる。
「あー分かっていたともさ」
 分かってはいたが、ここで湧き上がる腹立たしさは自然なものだ。
 はやくも出発の段取りを始めた仲良し組から外れて、ため息をつきながら反対側の席に身を寄せる。騒ぎから外れて、ひとり片づけを始めていた美鈴に、やっかみ半分、思いつき半分でこっそりと耳打ちした。
「なあ、いっそ仲間外れ同士ってことでさ、美鈴も一緒に行かないか」
「ええ!? えーと、私は…」
 急に話を振られ、動揺を隠さない美鈴はしどろもどろになる。
 片付けの手を止めてしばらく悩んだ風に唸っていたが、最後はやや困った顔で首を傾げた。
「やっぱり私は、仕事がありますから」
「どうせ咲夜の手伝いくらいしかしないんだろ。いいじゃないか、一日くらい」
「えーと…その」
 ありきたりな切り返しに、何故かますます困ったように視線を泳がせはじめる。ひきつり笑いに似たその表情は、単にわがままの処理に悩むようであり、どうも何かから逃げているようにも感じた。実際、彼女はじわじわ私から離れるように移動を始めている。
 いいや、これはもしかして。
 ぴん、とひらめいた私は、逃がさないようにさっと背後に回りこんで両肩を押さえ込み、美鈴の耳元にぼそりとささやく。
「さては外がこわいんだな?」
 びくびくっ、と全身が震えた。
 一瞬の絶句を悟られまいと肩の手を軽く払いのけながら彼女は、あえて振り向かず笑う。
「そ! そんなことないですよー…、なにを言ってらっしゃるんですかー魔理沙さんってば」
「はっは、そうだよなー。美鈴に限って外が怖いなんて、そんなはずがないよなー。門番で外が怖いなんて、それじゃただのヒキコモリだもんなー」
「ぐう…! そ、そうですよ…。なに言ってるんですかもう…はは、は」
 尻すぼみな否定は肯定と同義だった。
 それは彼女にも自覚されたことらしく、笑い声が絶えると同時に、ついに観念してうなだれた。
 やーい、ひきこもりー。という一言はさすがに飲み込んで、ふつふつと込み上げる感情を自分でも分かるほどの満面の笑みにかえ、まるで抱きつくように背後から美鈴の頬に押し付ける。
「そーかそーか。美鈴は外が怖いのか。へー」
「魔理沙さん…あの、そのですね」
「いやーこんなに気分がいいのは久しぶりだなー。こんなにしあわせでいいのかしら」
「…うう、ひどいですよお」
 とどめを刺したつもりは無いが、どうも今の一言で落城したらしい。ついに涙を浮かべ始めた。
 外が怖い、幻想郷から出るのが怖いという思いは、なにも特別なものではない。私はそう考えている。だがそれを心の底に持って生きている者からすれば、今の私の言動は少しばかり残酷だったかもしれない。
 いや美鈴の場合、単にヒキコモリ扱いが厭でいやで仕方がなかったのかもしれない。私も厭だし。
 ちょっと反省した私は、やれやれ、ころんだ傷が致命傷になる前に、なぐさめるように肩を叩いて精一杯の笑顔で約束する。
「みんなには内緒だよ、だぜ」
「…オネガイしますよ、絶対ですよ!」
 鼻づまった声になっている彼女の、訴える目は真剣だった。
「分かってる。分かってるって」
 にやけ顔をたたえたままで何度も頷き返してやると、数秒私を睨んでいた美鈴はやがて、なんとも分かりやすく絶望して肩を落とした。
 もはや処置無し、といった風に気だるく片づけを再開し、もう私がなにを言ってもまるっきり無視だ。
「シナモンアップルパイも、コーヒーもおいしかったぜ、さすが美鈴だ」
「アリガトウゴザイマスっ!」
 持ち上げてもこうである。
 でも、本当に怒っているのではなく拗ねているだけ、という感じでもある。
 それから幾度かチャレンジと失敗を繰り返したのちに、今は放っておいたほうがよかろ、と無責任に結論して、今度は仲良し組の会話に首を突っ込むことにした。こちらもほぼ、会話は終わりかけていた。
「それじゃあ、三日後にね」
 子供たちに言い渡す、少し背伸びしたパチュリーの声。
 小悪魔も妖精もそれぞれ了解して、記憶に刻む仕草をする。
「って、日程もう決まってるのか。私抜きで」
「決まっちゃったわ」
「…まあいいけど」
 しばらくは仕事を入れないつもりだったから、実際のところ日程なんてなんら問題ではない。
 それに明日にはまとまったお金が手元に届くはずなので、そちらの心配もない。
「すこしはスポンサーの意向も聞いてくれりゃーうれしいんだけどな」
 嬉しそうに小悪魔たちとおしゃべりしているうちの子を見て、横髪を掻いた。
 そんな事を口走りつつ、気乗りしなかった「買い物のお付き」に対して、前向きな気持ちになっている自分に気がつく私であった。


 美鈴の言う通り、大勢でのお茶会は楽しいものだ。
 普段しているような密室相手に討論会、という風のお茶も、それはそれで楽しみ方があるのだが、今回のような愉快さはないと思う。私だけならともかく、ググルやリドル、美鈴も一緒にお茶を楽しめたようなので、いや美鈴が楽しかったかどうかは本人に訊いてみないことには分からないが、良かったとしておこう。その場の雰囲気が盛り上がる、其処に意義を求めるなら今回のものが正解である。
 うちの問題児も、懸念していたほどの騒ぎは起こさず、パチュリーご自慢の温室をめぐってご満悦の様子だったので、連れて行って正解だったのだろう。本を読んでいたかどうかは知らない。いや本当のところ、其処はどうでも良かったのだが、図書館に行ったのだから一冊くらい読んでくれよと思わないでもない。
 朝食時の画策から始まった本日の一連の行動のうち、「実りある収穫」は帰り際に聞けた一言だった。
 以下Mさん(仮名)からのお悩み相談に対する、魔女からの助言である。

「時期を見て、逆らわず手を出さず、流れに任せなさい」

 彼女のスタンドは遠距離自動操縦に違いない。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://zaregoto.s19.xrea.com/x/MTTS/mt-tb.cgi/54

コメントを投稿