ブライ
・いつぞやの続きを書いてます。
楽しい。にやにやしながら書いてます。
まだ冒頭だけですが、
このサイトの存在意義を鑑みて、とりあえず載せときます。
続きは期待するな。書く意思はあるけど環境がそれを許すかどうかは別なのだ。
(あー、この辺が「エラそう」なのか? 何サマだ、って)
.
ラント・グイルマンという男は道理のないことを嫌う性質にある。
ことに、彼自身で納得のいかぬ事に対して、他所から何かを強要されることを嫌っていた。
他の者が勝手に動くのは良しとしている。他者には他者の意思があり、理解があるもので、それぞれが納得した上で動くのなれば過分な干渉はするまい、と考えている。要らぬ世話は、彼自身が嫌うことだからだ。
ラント・グイルマンにとって「納得」こそが重要だった。
しかし、彼には責務があった。
縄張りとも呼称する「エリア」の統括。ラント・グイルマンはある中規模のエリアを統率する者としての一面も持ち合わせている。彼自身は支配欲をあまり持たない気質だったが、自分の群れを守る為にも、エリア内の規律を統率し、支配しなければならない立場にある。そのため規律に触れる、あるいはエリアの治安を著しく乱す事象には手を出さざるを得ない事情もあった。道理はあれど、目のある不干渉を良しとする彼が、近頃もっとも嫌っている事のひとつである。
結果、統括者として働くときのラント・グイルマンは不機嫌である。彼は不機嫌を隠さないため、周りのものは身に沁みて理解している。それを知るからこそ、彼の腰を上げさせるほどの派手をやらかす者は、このエリアには一人も居ない。
彼の考えは明快である。
例え、家族同然の群れの仲間であっても、それがエリアの制圧者としてのラント・グイルマンの責任の範疇になければ、個人の持つ思想と行動に伴うあらゆる結果に、彼は決して手をださない。それぞれの「納得」は至情のものである。これが、彼の支配するこのエリアにおける数少ないルールのひとつであり、ラント・グイルマンの根底に流れるものである。
だからこそ、彼自身の意思で、彼自身が納得しかねる行動を起こすなど、有り得ない事だと言えた。
だが、それゆえに彼は今、自分自身でも理解しかねていた。
ラント・グイルマンが「納得」という己の道理に背いたのは、これが初めてのことだった。